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経営

【後編】覚悟をもって改革を実現させ、“下着のワコール”を超え、社会に必要だと認められる企業を目指します

  • 矢島 昌明Masaaki Yajima

    (株)ワコールホールディングス
    代表取締役 社長執行役員

サステナビリティへの取り組み

世界では、気候変動などの環境問題や、人権問題はさらに深刻さを増しており、企業に対して持続可能な社会に向けた取り組みが強く要請されています。253月期については、当社グループにおいて特に重要課題として認識している、人権と人的資本への取り組みを強化してまいります。
 2023年10月、当社グループはサプライチェーンにおける潜在的な人権リスクを把握するため、社外専門家の知見を活用し、「人権リスクアセスメント」を実施しました。また、人権デュー・ディリジェンスの運用開始に向けた準備も進め、主にCSR調達に関わる人権について、 「ワコールグループ人権方針」のもと人権尊重をグループ全体で推進しています。20248月には、従業員やお客さまの人権についても社内で教育を開始しています。「多様なお客さまが利用しやすい売場づくりと接客のためのハンドブック」を制作し、当社Webサイトで公表いたしました。さまざまなお客さまが利用しやすい売場環境やWebサイトの整備、接客時の心がけなどの方針を、従業員向けにまとめた指南書として活用していきます。ワコールの従業員はこのハンドブックの事例を参考にしつつ、一人ひとりのお客さまに寄り添い、それぞれのお困りごとに合わせた柔軟な対応を心がけていきます。
 また、当社グループを再び成長軌道に乗せるには、発揮された従業員一人ひとりの力が、組織の成果に結びつかなければなりません。研修や学びを支援することはもちろん、実力のある人財を登用し、活躍する場を提供します。ホンコンワコールやフィリピンワコールでは、すでに女性社長も誕生しており、当社グループ全体でも責任あるポジションで女性従業員が活躍し、社内に多様なロールモデルが増えていくことを期待しています。加えて、サクセッションプランについても今後導入していく予定です。将来の取締役や執行役員候補者のコンセプチュアルスキルやヒューマンスキルを把握し、当社グループの今後を担う人財として評価していきます。実力ある従業員は年代や性別を問わず登用し、会社としてバックアップする体制や組織の力とするマネジメントに力を入れていきます。

ガバナンスへの取り組み

中計リバイズについては、取り組みの先送りや実施漏れが発生しないよう、社内・社外取締役で構成する「グループ戦略委員会」で進捗を共有しています。委員会で討議する際には、「世の中やステークホルダーに対し明確に説明できることなのか」を突き詰め、全員が納得する結論を出しており、結論の先送りや予定調和が起こることはありません。2023年、社長に就任した直後、私は社外役員の方々に忌憚ない意見や指摘をいただきたいとお願いしました。それが旧来の文化にとらわれず、新生ワコールとして生まれ変わる原動力になると思ったからです。社会やステークホルダーの皆さまから賛同を得られないような案件が決議されることのないよう、議論を深めてまいります。
 あわせて、資本市場とも積極的に対話の機会を設けています。ステークホルダーの皆さまと実際に顔を合わせ、生の声をいただくことは、当社グループが目指す方向性や現状を正確にお伝えできるだけでなく、我々がもつ強みや弱みに対する市場からの評価も知ることができます。また、中長期的な視点でマーケットを捉え、企業価値の成長を追求する投資家の皆さまとの対話から、今後の当社グループの成長を確実に実現するためのヒントをいただくことが多々あります。企業価値向上というゴールに向け、双方が理解を深め、気づきを得られる重要な機会だと認識しています。

後編本文矢島社長.jpg

これからのワコールグループ

これからの当社グループは、インナーウェアのみにとどまらず、幅広い領域において、お客さまから必要とされる企業になりたいと考えています。当社グループには、創業以来蓄積してきたものづくりのノウハウや、研究成果、ボディデータなど、多くの経営資源があります。ステークホルダーの皆さまとお話しすると、我々がまだ活かせていない強みや、その存在価値を認識すらできていない資源がたくさんあると気づかされます。それらの貴重な資源に目を向け、活用する範囲を拡大していくことが、当社グループの成長に直結すると確信しています。拡大の方向性として、まず一つは、グループ間での資源の横展開です。 例えば、快適性に対応できるノンワイヤーブラは、国内のみならず、海外市場でもニーズの高いアイテムです。また、ブラジャー製造のノウハウを子会社のAi(アイ)での水着の開発に転用できたり、逆に水着の設計や素材に関する知見をブラジャー製造に転用できることもあります。それぞれが持つ資源を、事業の枠を超えて展開し合うことで、グループ全体としての提供価値を上げていきます。資源活用のもう一つの方向性は、展開領域の拡大です。例えばコンディショニングウェアの「CW-X」は、スポーツ領域だけでなく、けがの予防や、からだのサポートに役立つ商品としての展開を模索しています。国内外で進めている技術開発や研究で得た資源を、インナーウェア以外の領域にも拡大させることで、ワコールの強みを生かした「美・快適・健康」事業の拡大を目指していきます。
 私が思い描く理想の未来は、いわゆる下着と呼ばれる分野を超えて、お客さまのライフステージや日常シーンにおいて、ワコールのことを想起いただける瞬間を増やしていくことです。当社グループの経営資源は、創業から今日まで、女性のからだとこころに寄り添い続けた歴史によって蓄積されてきました。お客さまに育てていただいたたくさんの資源を活かし、お客さまにお喜びいただける価値に換えてお届けすることが、我々の使命だと考えています。
 ステークホルダーの皆さまには引き続きご支援賜りたく、心よりお願い申し上げます。


おわり