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経営

【後編】お客さまの「ありたい姿」を喚起し、自分らしい「美・快適・健康」をエンパワーメントする商品・サービスを提供します

(統合レポート2024より抜粋)

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  • 川西 啓介Keisuke Kawanishi

    株式会社ワコール
    代表取締役 社長執行役員

新たな価値を創造する「成長戦略」

■顧客戦略

これらのブランド戦略に加え、お客さまとの関係づくりを改めて強化すべく、顧客戦略も実行しています。ワコールは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用しながら、お客さまと深く広く長い関係性の構築に努めています。これまでの課題として、店舗やオンラインで一度購入いただいても、その後の継続的な購入につながらないケースが非常に多くありました。今後は、店舗とオンラインでの取り置き・取り寄せサービスの拡大や、アプリ経由で年代や骨格に合わせた商品提案など、より便利でパーソナライズされたサービスを展開します。

従業員が自由に考え、提案できる環境をつくる

これらの中計リバイズをやり切るためには、従業員のエンゲージメントが何より重要となってきます。企業として人的資本をどう強化していくかを考えるとともに、成果を上げた従業員に対して公平な評価と処遇で応えるという非常にシンプルな姿勢で向き合いたいと考えています。そのために会社は、従業員が自由に考え、提案できる環境を提供しなければなりません。従業員には、自分の役割と権限のもと想像力を働かせて考えたことを積極的に提案してほしいと思っています。その意見は、部署を動かし、会社を動かし、お客さまに寄り添った価値提供となって、社会への貢献にもなり得るのです。何より自身の成長につながることを実感してもらいたいと思います。
 ワコールの改革は、進むべき方向も実行すべきポイントも社内で理解されていますが、検証、改善、実行していくプロセスに時間が掛かっていると外部からしばしば指摘を受けます。263月期の最終年度に向けては、役員、従業員が一丸となって会社を動かし、スピード感を持って、取り組みを確実に実行できるよう努力していく所存です。
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新たなワコールの価値創造

ワコールでは、「顧客起点」での商品・サービス開発を行い、多くのお客さまからの支持、共感を得ることで業績改善を目指していますが、置かれている環境は非常に厳しいと言えます。出店先である量販店や百貨店の店舗数減少に加え、限られたリソースの中で効率よく生産・販売をしなければなりません。そのような現状を打破するためには、中計リバイズをやり切ることに加え、ワコールならではの新たな価値を創出し続けていくことが不可欠だと認識しています。

■ワコールの「美・快適・健康」事業の拡大

従来の3 Dボディスキャナーによる計測サービスを進化させた「SCANBE(スキャンビー)」は、新たな価値創造への取り組みの一つです。計測データというパーソナライズされたデータをお客さまに提供することで、ご自身のからだに興味を持っていただき、「 自分らしさ」の実現をサポートします。20243月からは、従来の3D計測に加えて、AIによる骨格診断をセルフで受けることができる「わたしを知る骨格診断」サービスを開始しました。今年春に東京・新宿の商業施設で行ったポップアップイベントは大変好評で、これまでワコールと接点のなかったお客さまにも多数来店いただきました。
 また24年5月には、1964年より蓄積してきたワコール人間科学研究開発センターのボディデータや「SCANBE(スキャンビー)」の計測データを活かした「3D ボディデータ×PHR※ データによるソリューション提案」により、ワコールは経済産業省が選ぶ「令和5年度補正PHR社会実装加速化事業」の実証事業者に採択されました。同じく採択された「あすけん」様と協業し、2025年大阪・関西万博の場で、「あすけん」様のPHRデータと「SCANBE(スキャンビー)」を掛け合わせた新たなサービスを提供する予定です。「SCANBE(スキャンビー)」と外部データを連携する新たなチャレンジを通じて、大阪・関西万博が我々にとってお客さまとの新しい接点、新しい体験価値提供の場となることを大いに期待しています。
 加えて、コンディショニングウェアを展開する「CW-X」については、ブランドの成長実現に向けた戦略を構築し、「美・快適・健康」事業の拡大に貢献していきます。「CW-X」はテーピング原理を応用して開発したウェアで、タイツやトップス、膝サポーターなどを展開しています。着用するだけで運動時の筋肉や関節の動きをサポートできることから、多くのアスリートにも愛用いただいています。「CW-X」は運動時のパフォーマンス向上だけでなく、けがの予防やからだの負担軽減にも活用できると考えているため、例えば、運送業や介護職など、からだを動かす仕事に従事する方々に向けたサポートの商品開発も検討したいと思っています。長年、体型変化や筋肉の動きについて科学的な研究を続けてきたワコールだからこそ、幅広い領域で「美・快適・健康」に関わる新たな事業の開拓を進めていきます。

長い歴史の中でワコールは、からだを美しく見せる造形性にこだわり、世の中にないインナーウェアの新しい価値を創出することで、お客さまの「欲しい」を喚起してきました。一人ひとりのからだにフィットする商品を丁寧に作る技術はどこにも負けないと自負しています。これからもその技術を生かしながら、顧客起点での商品・サービスを開発することで、「自分らしさ」をエンパワーメントする存在を目指します。インナーウェアにとどまらず、お客さまの自分らしい「美・快適・健康」に貢献する商品やサービスを提供し、新たな価値を創造し続けてまいります。

PHRPersonal Health Record)とは、健康診断結果をはじめとする、体重、血圧、血糖値等の情報やウェアラブルデバイスやセンサー機器等で取得される食事、運動、睡眠等の健康医療情報など

おわり