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今の時代のお客さまが求める品質とは? 長く愛されるための信頼、サステナブルな消費、驚きのある新しさ。 全てを満たした“愛される商品”を届けたい。

ワコールの「創業の精神」の経営の基本方針は「愛される商品を作ります」という言葉から始まりますが、
いつの時代においても「長く愛される商品」をお届けすることが、ワコールの使命であり提供する価値です。
そして、「良い商品を長く使っていただく」ことは、お客さまのサステナブルな消費につながります。
そのために欠かせないのが「商品の品質保持」です。
「長く愛される商品を届ける」ことを実現するために、どのような取り組みが行われているのか。
ワコールの提供価値である本質的な“品質”と、今の時代のお客さまが求めている“品質”。
 これらをどう捉えているのか、を商品営業部、品質保証部、技術部の、各担当者にインタビューしました。
  • 坪内 有ARI TSUBOUCHI

    2006年入社

    第1ブランド

    ワコールブランド商品営業部

    商品営業一課 課長

    商品戦略立案、売上計画等、商品づくり全般を担当。

  • 木曽川 由美子YUMIKO KISOGAWA

    1998年入社
    技術・生産本部  技術部
    技術設計課 課長
    商品の縫製工程を決定し、どのように量産していくのかを各工場へ指示・監督している。

  • 橋本 章子AKIKO HASHIMOTO

    2006年入社
    品質保証部 商品試験センター
    材料や商品サンプルの試験を行う。 素材メーカーなどで試験する場合もワコール基準で実施できるよう情報交換も行う。

直接肌に触れるものだから、安心・安全で、ここちよさが長く続く商品を安定して供給する

―「品質が高い」というのは、具体的にはどういうことだと考えていますか?

坪内:一般的には、安全性や耐久性をイメージされる方が多いのではないかと思います。もちろんそれを基本的な考えとして担保しつつ、着用感や商品の見た目も品質に関わると捉えています。お客さまに安心・安全な商品を届けることは、企業として当たり前のこと。それに加えて、お客さまに、いかに商品を気に入って、愛用し続けてもらえるか、またそんな商品を安定して供給し続けられるかも重要だと思っています。

木曽川:商品は「見てきれい、着けてここちよい、使って長持ちする」というストーリーが大切だと思っています。ワコールの工場は世界中にありますが、すべての工場で素材や工程を厳しく統一させることにより、「ワコール品質」を保っています。一部、自動化を取り入れていますが、レースを一枚一枚手でカットするなど、商品は基本的に人の手で作ります。着用したときに、肌当たりが悪い…なんてことはあってはならない。ただ、品質は“人を知ってこそ”という一面もあると思っています。以前、海外の商品企画に携わったことがあるのですが、日本人は肌が柔らかくて敏感なのに対して、外国の方は肌質が違い、日本人ほど肌当たりを気にしていないと感じました。お客さまをよく知り、求めるものに合わせて商品づくりをしていかなければなりません。

橋本:インナーウェアは使用期間が長い傾向のあるアイテム、かつ、肌に直接触れるものなので「時代に合わせた厳しい品質基準を設け、お客さまにご使用いただいている間、ご満足いただける状態を保つこと」と考えます。品質保証部では、素材に有害物質が含まれていないか、耐久性の基準をクリアしているかなど、目には見えない部分の品質をチェックしています。法律や基準は頻繁に変わるので、こまめに情報をキャッチし、それに合った品質を守るのが業務です。時には、法律以上に厳しい基準を設ける場合もあります。

―なぜ、ワコールは高品質のものづくりにこだわるのでしょうか?

坪内:インナーウェアは消耗品という一面もありますが、ワコールの商品は市場の多くのインナーウェアと比べると高価格です。だからこそ「高くても価値があった」とお客さまに思っていただけるような、価格に見合う品質は絶対に必要です。もし1回か2回の着用でダメになったとしたら、がっかりしますよね。高品質な商品は”ファン化”にも直結すると思います。

木曽川:お客さまはワコールの商品は良いと期待して買ってくださっているので、安心して使用できるものを提供していきたい。品質の良いものを作り、それを使っていただくことは、お客さまの期待に寄り添うことにつながります。工場で商品を生産するときは、ワコールの提供価値やルールを守って品質を維持する重要性をスタッフと共有しています。
                   
橋本:品質には「審美性」、「商品表示」、「取り扱いのしやすさ」という面も含まれると思います。お客さまが商品を選ぶ時に、「本当かな?大丈夫かな?」と不安があっては買い物を楽しめないですし、そもそも買おうとは思わないでしょう。ですから、品質はしっかり担保しておかないといけない。それから、個人的には、高いレベルにチャレンジすることは、自分たちが仕事をする上でも楽しいと感じます。高い品質を目指すことは、ものづくりの楽しさでもあると思います。

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サステナブルな観点で考えたとき、過剰な品質になっていないか。基準を今の時代に合わせることも必要

―お客さまが今、求めている品質とは何だと思いますか?

坪内:最近はサステナブルの観点からも、質の良いものを長く使いたい、無駄をなくしたいという声は多いと感じます。そういった背景を考えると過剰にやりすぎていないかと思うところもあります。例えば、高い品質レベルを守るために、材料をたくさん使って試験を繰り返したり、やり直しをする事もあります。       

―品質が高ければ高いほど、基準が厳しければ厳しいほど良い、ということではない?

坪内:そうです。サステナブルなものづくりを考えたとき、環境に優しい材料をただ使うだけでは不十分で、作る工程での無駄や、やりすぎをなくすことも今後は検討していく必要があると思います。お客さまが求める品質とは?どこまで求められているのか?そのために、本当に必要な試験や基準は何か?それを見直す時期だと考えています。

―お客さまの購入の仕方も変わってきました。

木曽川:ウェブでの購入が増えてきて、実際に商品を触ることなく商品を選ぶお客さまが増えました。そうなると、写真と文章だけで判断して「買っても大丈夫」と思っていただく必要があります。それにはブランドや商品に対する信頼が不可欠なので、やはり高い品質は欠かせません。

―思っていたのと違った、ということもあり得ますよね?

坪内:お客様にはそう思われないようにしないといけないと思っているので、ウェブも含めてすべての商品説明の表現は厳しくチェックしています。商品の機能については、業界一般の評価法が無い場合でも、品質保証部で可能な限り「客観的なデータ」を取得してもらいながら、機能が備わっていることをしっかり確認した上で表現しています。

橋本:今や、お客さまは日々、いろいろな情報に接しておられます。ですからワコールからの情報は、倫理観の高い、エビデンスのある表現をするようにしています。

―愛される商品を常に届けるための、それぞれの業務での取り組みをお聞かせください。

坪内:「愛される商品」というのは、もう1枚欲しい!とか、長く使いたい、と思ってもらえる商品だと思います。それを実現していくために、店頭のビューティーアドバイザーから教えてもらうお客様の反応や、商品をご使用いただいたお客さまからのお声である“お申し出”は、必ず関係部門のメンバーと共有しています。“お申し出“は、お客さまの気になるポイントを知る貴重な手がかりの一つなので、今後のファン化に繋げるために改良が必要だと思う内容は検討します。

木曽川:技術部門の側面から見ると、“お申し出”の原因が製造不良の場合は、なぜそういう商品を発生させてしまったか原因を追究し、そもそもの工程に問題はないかということまで見直し、再発防止につなげています。
 
橋本:私たちの商品は、素材メーカーや試験機関など、さまざまな方と協力体制をとりながら作っているので、ワコールから「各社で、どの試験や基準をクリアして品質を保っていただきたいか」の情報発信をしています。ひとつの素材を作るために、生地を作る会社、染色する会社など複数の会社が分業して製造していますが、各社とワコールが丁寧にコミュニケーションをとり、サプライチェーン全体で品質を守る取り組みを行っています。  

新しいニーズ、それに応える新しい素材や方法。変化に対応するさまざまなチャレンジが、新しい品質基準をつくる

―新たな愛される商品を世に送り出すことも必要ですね。

坪内:今ある商品も大事ですが、それに加えて、多様化するニーズに合わせた新しいチャレンジもしていかないといけないと思っています。「こういう商品が欲しかった」「こんな新しい機能があるなら使ってみたい」と思えるような商品開発をしていきたいと考えています。ですが今まで使ったことのない全く新しい素材を使った新商品でも、当然、品質は担保しないといけません。そこが難しいところです。最近は、素材開発の技術も進んでいて、良い素材だけど、商品化する上では裁断や縫製、工場での量産が難しいものもあります。お客さまからのニーズと技術的な難しさを融合させないといけないため、どうすれば実現できるのか、技術部や品質保証部と相談しながら……。皆さんには本当にお世話になっています(笑)。

木曽川:お客さまが欲しくなるような新しいものを作っていかなければいけない、と技術部でも思っています。今のルールはこうだから縫えません、という姿勢では新しいものは生まれません。今ある規格に当てはまるものかどうかも見ながら、じゃあどうやったら縫えるのか、どうやったらコンセプトを実現できるか、を検討します。

橋本:商品を企画する側は、市場にないものや、驚きのあるものをできるだけ実現したいという想いがあります。一方で、品質保証部としては安全・安心は絶対に守りたいと考えているので、そこのせめぎ合いがあったりもします(笑)。最近は繊維以外の素材を使う商品も増えてきました。その都度、使用して安全で安心なものかどうか、確認しています。

―品質について課題と感じていることや、今後取り組んでいきたいことは?

橋本:今後は「品質基準」の大きな見直しに取り組もうとしています。かつては“お申し出”や問題が起こるたびに、それが絶対に二度と起こらないように基準を高くするという考え方でしたが、そのために時間がかかってしまったり、結果的に価格が高くなってしまうことが、本当にお客さまのためになるのか。改めて、バランスの取れた品質基準を検討していきます。

木曽川:技術部でも「検査」について見直しを実施していきます。検査を追加して過剰な品質になっていないか。手をかけすぎていないか。いいものを作ろうという責任感のもと、やってきたことが正しかったのかどうかを振り返ることが必要です。また、お客さまのニーズは変わってきています。ニーズに合う商品を作るために、薄くて柔らかい素材を使うと、縫製が難しかったりしますが、私たちが対応できるように進化していく必要があると感じています。

坪内:新しいチャレンジにはまだ基準がありません。基準がないものを作ろうとすると、安全を意識しすぎて高い基準を設定しがちです。でも、本当に必要なのか確認・検討していかないといけないと思います。仕入れ先や外部の意見も聞きながら、私たちも知識を増やしてアップデートし、お客さまが求める品質を実現するために、「本当に必要な基準は何か?」を考え続けることが、今後ますます大切になってくると思います。

おわり