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【前編】美意識や価値観の変化から市場を開拓した『レースボクサー』

ワコールの男性用インナーウェアブランド「WACOAL MEN(ワコールメン)」は、
ブラジャーやランジェリーではよく使われる“レース素材”を使用したボクサーパンツ『レースボクサー』を、
2021年10月に応援購入サービス『Makuake(マクアケ)』で先行販売しました。
発売開始後も、ワコールウェブストアでは入荷後すぐに完売したり、
2022年には『GOOD DESIGN BEST100』を受賞するなど、大きな反響があった『レースボクサー』。
前編では、これまでになかった“レース素材を使ったメンズインナー”を開発した背景や、
新しい販路に挑戦した経緯を、担当メンバーが語りました。

※Makuake:株式会社マクアケが運営する国内トップクラスの実績と人気を誇る応援購入サービス。
まだ世の中にないものやストーリー溢れるチャレンジが集まる「アタラシイものや体験の応援購入サービス」を実施している

  • 中山 頌子Shoko Nakayama

    2013年入社
    (株)ワコール
    第2ブランドグループ
    メンズインナー商品営業部
    商品営業課
    「WACOAL MEN」の商品戦略を立案するマーチャンダイザーを担当。

  • 小西 翼Tsubasa Konishi

    2017年入社
    (株)ワコール
    第2ブランドグループ
    メンズインナー商品営業部
    商品営業課
    「WACOAL MEN」の販売計画を立案するマーチャンダイザー。EC販売も担当。

  • 稲積 美紀Miki Inazumi

    2005年入社
    (株)ワコール
    第2ブランドグループ
    メンズインナー商品営業部
    商品企画課 課長
    メンズインナー全体の商品企画を担当し、「WACOAL MEN」のデザイン、プランニングを手掛ける。

華やかでワクワクするメンズインナーを作りたい

「WACOAL MEN」はどんなブランドなのでしょうか?

中山:“「追いつけない下着」をつくろう。”をテーマに、フィット感・肌ざわり・動きやすさにこだわりぬいた男性用インナーウェアを開発しているブランドです。当初はビジネスマンをターゲットにしていましたが、もっと本質的な下着の良さを楽しんでもらおうと年齢や属性で区切るのではなく、“下着にこだわりをもったすべての男性”をターゲットにしました。現在はECでの売上が6割を超えていて、実店舗では百貨店を中心に展開しています。

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稲積:まだまだ知名度が高くないので「ワコールってメンズもやっているんだ!」と驚かれることも多いです。女性用インナーウェアの開発や販売で培った技術や経験があるワコールだからこそ提案できる、品質の良さ、素材の選び方、設計、機能性をかけ合わせて、「WACOAL MEN」ならではの下着を作っています。

『レースボクサー』を企画した背景を教えてください。

中山:2020年に実施した消費者調査がきっかけの一つです。男性用インナーウェアにおいても、女性用インナーウェアと同様に、きれいさや上品さが求められていることが調査結果から読み取れました。また、ワコールウェブストア限定で販売していたレースのブリーフパンツが好評で、かねてよりお客さまから「すぐ売り切れるからもっと作ってほしい」、「ボクサータイプも欲しい」という要望をいただいていたこともあり、「男性の美意識が変化しているのだな」と感じていました。

稲積:「レースを使って男性用のパンツを作ってみたい」という思いは、ずっと心の中にあり、一つの夢でもありました。男性の下着売場はどのシーズンでも、黒、紺、グレーの商品しか置いていないことが多いですよね。一方で、女性はきれいで、華やかな商品がたくさんある。メイクやネイルを楽しむ男性が増えているように、美意識の変化が起こっている今こそ、そういった華やかでワクワクする感覚を、レースを使った男性用インナーウェアを通じて男性にも実感してもらえるのではないかと思い、提案しました。

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よい商品をつくることに徹底的にこだわった

商品化にあたって、難しかったことはありましたか?

中山:ただ単に「目新しい商品ができました。レースを使った美しい商品です」ではなく、徹底的に男性のニーズにマッチした、はきごこち、機能性、カッコよさを追求しました。

稲積:レースは、キレイな見た目だけではなく通気性も良いので、機能性とデザイン性を両立できる素材なんです。でも繊細なレースを使うと、着用するときにウエスト部分や股下部分にかかる負荷で生地に穴が空いてしまう懸念もあるため、強度をある糸で、オリジナルのレースをつくりました。また、レースの透け感に抵抗がある方もいるので、着用時に肌が透けすぎないこととカッコよさの両立を意識して、花柄にリーフや幾何柄モチーフを組み合わせ、華やかで落ち着きのあるデザインに仕上げました。初めてのサンプルが出来上がった時、社内で試着してくれた人の反応がとても良かったんです。「はいてみて気分が上がった」という声もありました。はきごこちも、「きつい」とか「肌ざわりがよくない」という声が出る度に修正を重ねて、美しさと機能性を兼ね備えた商品に仕上がったと思います。

中山:ただ、「お客さまに喜んでいただけるよい商品ができた!」という期待と自信がある一方で、「今までと同じ売り方だとお客さまには上手く伝わらないな」とも感じていました。

新しい販路でのチャレンジ

『Makuake』での販売を選択した理由は?

中山:ワコールウェブストアでレースブリーフを購入してくださっていたお客さまは、ワコールを知ってくれているごく一部の男性でした。私たちには、ワコールを知らない男性にも「レースの商品をはいてほしい」という思いがあり、初めて『Makuake』を利用しました。

小西:『Makuake』を利用するお客さまは新しいものを探している方が多いので、ワコールや『WACOAL MEN』、ワコールに男性用インナーウェアがあることを知らない方にアプローチする良い場所だと思いました。一方で、商品を伝えるページづくりは大変でした。『Makuake』のサイトで映えるように、ガチガチの真面目なコメントではなく、多くの男性に「買ってみたい」と思ってもらえるように、他の部署や社外の方にも力や知恵を借りながら、何とか納得できる表現になりました。

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稲積:デザイン面だけでなく、機能や素材の特長もしっかり表現しないといけないし、事前に集めた試着モニターの声も反映しながら、「このレースは…」、「設計面では…」と、すべての表現を作っていくのは、非常に大変でした。でも、その作業があったからこそ、レースボクサーの企画がゆるぎないものになったと思います。

小西:着用イメージもみんなで意見を出し合いましたよね。外国人のモデルを起用するとセクシーなイメージに寄りすぎてしまうので、ナチュラルでもかっこよく見える日本人モデルを選んで、日常を切り取ったシーンになるように撮影しました。

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中山:『WACOAL MEN』自体、もともと百貨店限定ブランドでしたが、市場環境の変化によって、ECの強化をしようと動き出していたので、ECでの認知度を向上させる一つの手段として有効だったと振り返っています。また、お客さまの反応が「応援コメント」を通してリアルタイムで見ることができたので、ポジティブなコメントがどんどん寄せられる様子は、私たちの自信にもつながりました。

稲積:販売開始してすぐに、「こんな商品を待っていました」というコメントをいただいて、みんなで喜んだのを覚えています。

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小西:『Makuake』では複数枚でのセット販売の反応がよいと聞いていたので、セット販売にも挑戦しました。とはいえ、3枚セットだと価格も高くなりますし、「そんなに売れないだろう」と思っていたら、真っ先に3枚セットが売り切れてしまったり、5色すべて購入してくださったお客さまもいらっしゃいました。

中山:予想以上の反響で、『Makuake』のマンスリー表彰でも2位をいただきました。『Makuake』の企業コンセプトである「広がるところに広がる」にマッチしていたプロジェクトに贈られる賞なのですが、『Makuake』の社内でも特に好評だったと言っていただけました。

後編に続く