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経営
サステナビリティ

多彩なメンバーの意見を集約してテーマごとのマテリアリティを抽出

サステナビリティ推進プロジェクトの事務局としてマテリアリティ(重要課題)の策定を進めてきた4人。
「顧客」「従業員」「環境」「社会」「ガバナンス」のテーマごとに分かれたチームで議論を進めてきた道のりを振り返りました。

(統合レポート2022より抜粋)

ワコールグループの2030年に向けたマテリアリティ(重要課題)についてはコチラ
  • 山田 隆登Ryuto Yamada

    2007年入社
    (株)ワコール
    事業企画部
    事業企画課
    課長

  • 山本 久美子Kumiko Yamamoto

    2013年入社
    (株)ワコール
    第1ブランドグループ
    サルートブランドチーム
    (インタビュー時は事業企画部 事業企画課)

  • 谷 春菜Haruna Tani

    2012年入社
    (株)ワコールホールディングス
    コーポレートコミュニケーション部
    サステナビリティ推進担当

  • 山本 圭奈子Kanako Yamamoto

    2010年入社
    (株)ワコールホールディングス
    コーポレートコミュニケーション部
    サステナビリティ推進担当

「顧客」では、お客さまに向き合い続けることに、
「環境」では、 お客さまとともに取り組む必要を感じた

2030年に向けて事業上のマテリアリティを策定されました。
どのようなプロセスでマテリアリティの特定を行ったのですか。

山田:2つのフェーズがありました。最初に、執行役員を含むリーダー6名と事務局で将来像やマテリアリティのベースとなるものを作成し、その後リーダーに指名された中堅メンバーと公募で集まった若手メンバーが加わり、チームごとに議論を進めました。ガバナンスの課題抽出については、専門的な知識が必要ということで、リーダーである経営企画部長と指名メンバーで取り組み内容を検討しました。

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各チームでの議論を事務局はどのようにまとめていったのですか。

山本(久):私が担当した「顧客」チームでは、顧客体験価値の最大化と企業としての成長をいかに成し遂げていけるか。それを同時に達成していくうえで大切なことは何かという視点で3点に絞りました。1つ目の「パーソナライゼーションの追求による顧客体験価値の向上」は、一人ひとりに合ったサービス、商品を提供することで、顧客の体験価値を上げること。そのためにお客さまとつながって、お客さまを学び、事業へ結びつけようとしています。2つ目の「事業領域拡大への挑戦」は、私たちの知見や技術を活用して、より幅広い人々にあらゆる角度から「自分らしい美しさの実現」をサポートすること。そして3つ目が「商品品質の深化とサービス品質の構築」です。高いレベルの品質管理を行っているという自負はありますが、今後の事業領域の拡大を見込んで、サービスや接客など「商品以外の品質」はどうあるべきか。「今の時代に要求される品質」とは何かを見直すことが必要だと結論づけました。

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「環境」チームはいかがですか。

山本(圭):「環境」では「環境負荷を低減する事業活動の推進」を掲げました。持続可能な社会を実現するために、そしてワコールが成長していくためにも、環境への負荷を減らさなければいけないという認識は共有できていましたし、お客さまの環境意識が変わってきていることも実感していたので、課題抽出自体は難しくありませんでした。ただ、「環境」への対応は大事だとわかっているけれど、実際にワコールとしてどうすれば貢献できるのか、具体的に考えることは難しかったと思います。そんな中出た意見は、「自分たちだけではなくお客さまと一緒に取り組まないとできないんじゃないか」ということでした。そこで、従業員と消費者の両方で環境意識の醸成に取り組むことを、具体的な項目として入れました。

「社会」を変えるのはまず足元から個人の成長を促す「従業員」

谷さんは「社会」チームですね。

谷:はい。チームでは社会的価値を提供することを課題抽出の軸として考えました。新たにマテリアリティを設定していくために、まずワコールがすでに行っている事業で、見方を変えたら、社会的な意味や価値を提供していることがあるかもしれない、と学ぶことから始めました。これは会社を理解することでもありましたし、特に若手メンバーは知らないことも多く「そんなことやってるんですか!」というような反応もありましたね。

「社会課題を解決する共創イノベーションの推進」という課題が導き出されました。

谷:中でも特にチームで深く議論したのは「女性のQOL向上への貢献」と「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進」でした。QOL向上については、あえて「女性の」としたところが議論のポイントになりました。すべての人が生きやすい世の中にしなければいけないと考えているのに「女性」と掲げるのはどうなのかという意見がある一方、女性用インナーウェアが事業の中核であるワコールだからこそ、そこに注力していくべきなんじゃないかと議論しました。そしてD&Iの推進については、すべての人が自分らしく活躍できる社会を実現するために多様な価値観、多様な人を受け入れることが当たり前の社会にしていきたい。これはまず自社内で研修をするなどして、実践者を社内から増やしていこうと話し合いました。

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「従業員」は人材の育成、組織の開発、そして健康ととても身近なテーマですね。

山田:まず、人材育成です。今の時代、転職や定年後も働くことが当たり前になっています。このような環境においては、年代や役職に関係なく、自分の能力を高めてワコール以外でもしっかりキャリアを積んでいけるように自律することが大切です。そして、従業員一人ひとりが成長することが、結果的に「成果を出せる組織」につながると考えました。次に組織開発です。ミッションと全社的な目標設定を共有している一方で、各部門や個人の目標はオープンになっていない。ですからこのマテリアリティを推進するうえで、組織ごとのミッションや目標を共有し、達成できたかどうかをしっかり振り返れるようにしていくべきだという意見が出ました。

課題解決のためにはまず自らを変えていくこと

「VISION 2030」が動き出し始めましたが、今後の進め方や進捗については。

山田:今後の推進体制は大きく3つに分かれています。「顧客」「従業員」は経営課題検討会の中で各事業部門が事業計画と連動しながら進めます。「環境」「社会」はサステナビリティ委員会で進捗を管理し、「ガバナンス」は取締役会の中で推進していくこととしました。また、サステナビリティ委員会の傘下に、2つのプロジェクトを設置することにしました。1つが「経営理念浸透推進プロジェクト」。従業員の力とエンゲージメントを高めるために、サステナビリティ推進プロジェクトを通じて決定した新たなミッションをどうグループ全体へ浸透させ実践していくのか、今後の計画を詰めていきます。もう1つが、「女性のQOL向上プロジェクト」です。ワコールは「ブレストケア活動」として、乳がんの検診啓発から術後のサポートまで幅広い活動を行っていますが、活動全体として連携が取れていないことが課題です。また、多くの女性が心身ともに健康で輝くような状態であるために、ワコールとして何ができるのか、具体的な取り組みを各部門の担当が集まって議論していきます。

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今後、皆さんはどのように課題解決に取り組みますか。

山田:マテリアリティに対してのKPIについては策定したものもありますし、現在定めている最中のものもあります。それらの項目を、いかに個人の目標までブレイクダウンしていくかが大事だと思っています。私自身、2022年4月から課長となり、メンバーの目標設定にも携わっています。マテリアリティ達成に向けた部門目標を個人の目標に反映し行動できるメンバーを増やすことで、一人ひとりの成長につなげていきたいと思っています。

山本(久):マテリアリティを解決していくためには、生活者の意識の変化を把握していかなければいけないと感じています。ワコールはどういう未来を創っていくのかをきちんと示すためにも、定期的な調査も踏まえて生活者の変化、世の中の変化に関する情報収集をしていくことも自身の役割だと思っています。

山本(圭):理解や意識するだけではなく、行動することが大事です。そのために、みんなが「自分事化」する必要があると思います。特に「社会」や「環境」については、日々の行動がつながっていると意識することは難しいです。まず、小さなことでも「やってみよう」というチャレンジする風土づくりをして、一歩踏み出せる人を増やしたい。そしてそのアクションをみんなで肯定し合うこと。否定や批判だけではなく、ポジティブな意見をちゃんと言い合えるような会社にしていきたいです。

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谷:今回のプロジェクトには、グループ従業員約2万人のうち、50人ほどが携わってくれました。でも、50人だけと言えばそれだけ。誰かが決めたこととギャップを感じている人もいるかもしれません。一人ひとりの行動の積み重ねでしか、ミッションもマテリアリティも達成できない。多くの人に意識してもらえるようにしていきたいと思っています。そのためにまずは、意識して実行している人や自己変革しようとしている人のポジティブなパワーを、社内に広く伝染させていきたいですね。

おわり