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経営
サステナビリティ

【前編】多世代の意見を融合させて練り上げた「大いなる将来」へと歩む「MISSION」

約1年間、自らのあり方や役割について考え続けたサステナビリティ推進プロジェクト。
執行役員を中心としたリーダーと、中堅の指名メンバー、そして公募で集まった若手従業員が、
多様な立場から意見を出し合い、ワコールグループが現代社会で果たすべき「MISSION」を定義しました。
前編では、プロジェクトが始まった経緯や参加したメンバーの想いを語りました。

(統合レポート2022より抜粋)

  • 堀 卓朗Takuro Hori

    1989年入社
    (株)ワコール 執行役員
    第1ブランドグループ長

  • 稲積 美紀Miki Inazumi

    2005年入社
    (株)ワコール
    第2ブランドグループ
    メンズインナー商品営業部
    商品企画課 課長

  • 澤 萌子Moeko Sawa

    2015年入社
    (株)ワコール
    マーケティング統括部
    宣伝部 東京宣伝課

  • 希代 駿Shun Kitai

    2018年入社
    (株)ワコール
    技術・生産本部 生産管理部
    生産管理課

創業期より70年にわたり支えになってきた
経営理念を見つめ直す

サステナビリティ推進プロジェクトは2021年4月に発足し、1年間議論を重ねてこられました。
プロジェクトがスタートした時期の状況について教えてください。

堀:コロナ禍でもあり、改めて企業の存在価値を問い直す時期であったと感じています。また、環境や人権に関すること、ジェンダー、ダイバーシティ&インクルージョン…とさまざまな社会課題が私たちを取り巻いています。社会から必要とされるワコールグループであり続けるために必要なことは何か、考え直さなければならないタイミングだったと思います。

このプロジェクトでは、立場の違うリーダーが集まって、中長期的にワコールグループが目指す姿について話し合われました。

堀:私たちが定義している「サステナビリティ」とは、顧客から愛され、社会から必要とされる企業であり続けるということですが、それを支えるベースになるのは経営理念だと思います。ですから、経営理念を改めてきちんと読み解きました。同時に現在の当社グループの業績、成長度合いを見てみると、必ずしも計画通りに進んではいない。これを受けて、何が足りないのかという課題認識からスタートしました。

プロジェクト全体としては、どのようなステップで進められたのですか。

堀:約1年間にわたるプロジェクトでしたが、当初は月に数回、6人のリーダーと事務局メンバーが集まって議論しました。リーダーそれぞれが思い描く将来像を共有しつつ、グループが現代社会において果たすべき役割や重要課題として特定すべきことなどを語り合いました。その後、自分たちが思っていることだけではなく、これから長く活躍してもらう、若手従業員の本音を聞こうということになり、中堅のメンバーを指名するとともに若いメンバーを公募しました。新たなメンバーが集まってからは、月に1、2回全員で議論しながら進めてきました。

指名メンバー11人と、グループ子会社やBA(ビューティーアドバイザー)など公募で集まった30人が合流されました。考え方や感性の違いを感じた部分はありましたか。

堀:とりわけ大変だったのは、そもそもの経営理念をどう扱うべきか、ということです。創業以来、受け継いできた当社グループの目標には「世の女性に美しくなって貰う事によって広く社会に寄与する」とあるのですが、今は性別を問うような時代ではないため、目標そのものを変えるべきという人もいれば、中核事業が女性用インナーウェアなのだからそれを表現してもおかしくないと言う人もいました。また、変えるべきと言うメンバーの中でも、その度合いがみんな違うのです。長年、月の初めに唱和するほど大切にしてきた言葉ですから、みんなの想いに違いがあって当然です。だからこそ新しくする必要があったんじゃないかと、今となってはそう思います。

若い世代の本音をすくい上げ
現在の課題を浮き彫りに

稲積さんは指名メンバーとして参加されました。

稲積:私は長くメンズインナーのデザインを担当していますが、事業部や業種を超えて、いろいろなことにチャレンジしたいと思っていたので、プロジェクトに声をかけていただいた時はうれしかったです。昨年はマネージャーに昇任してまだ1年目だったので、公募の若手メンバーたちをまとめ、意見を引き出す役割にプレッシャーも感じていました。ですが、メンバーの中で、クリエイターとして参加しているのは私だけでしたから、クリエイター代表として、ものづくりへの想いを伝えながら、ワコールの未来をみんなで語れるように意識して取り組みました。

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稲積さん自身は、創業の精神をどう捉えていましたか。

稲積:そもそもの経営理念は、創業者の塚本幸一さんがこの会社を創った想いを表していて、とても力強い言葉であり、従業員のみんながそれぞれの根底に持っているものです。基本方針の中に「愛される商品を作ります」「時代の要求する新製品を開発します」という言葉があるのですが、それにかなう商品になっているか、私自身も常に考えながらものづくりに携わってきました。ですからガラリと変えることは違う。ただ個人的には、目標に性別を限定せず、人間愛の要素を加えることも必要になっていると感じていました。塚本さんの想いを継承しつつも、多様な人々に快適さや美しさを伝えていく表現にできないかと考えました。

澤さん、希代さんは公募に応募されたメンバーです。なぜ参加したいと考えたのですか。

澤:参加メンバーは、世代も立場も仕事内容も違いますから、何を大事とするか、何を譲れないかが全く違い、「理解はするけど共感はしない」というやりとりもありました。必要なコンフリクトだったと思いますが、正解のない中で答えを出して、それをみんなが納得した状態にしなくてはいけない。その過程は大変でした。

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希代:私はプロジェクトに参加する前から「ワコールらしさ」とは何だろうという疑問を持っていました。「ワコールっぽい」「ワコールらしい」という言葉を社内でよく耳にするのですが、従業員が考えている「ワコールらしさ」とお客さまが期待される「ワコールらしさ」にギャップがあるのではないか、と漠然と考えていたのです。お客さまとのギャップがこれ以上広がってしまうと良くないなと不安に感じていたタイミングで、公募案内にあった「将来ワコールが持続的に成長していくために取り組むべきことについて、一緒に考えませんか」という一文を見て、これは参加するしかないと判断しました。「グループ全体が目指す目標を再定義する」ことも掲げられていて、ワコールは誰に寄り添いたいのかという答えにもつながるだろうと思いました。

実際にプロジェクトが進んでいく中で、どのような感想を持ちましたか。

希代:すべてオンラインで開催したので、どこの事業所で働いているとか、何の担当をしているかとか一切関係なく議論できたのはとても良い経験でした。また、自ら手を挙げて参加していることに責任を感じましたし、発言に責任を持つためにも、普段の業務をおろそかにしてはいけないと自分を律する機会にもなりました。

稲積:普段は業務に関係するメンバーとしか話す機会がありませんが、プロジェクトでは幅広いメンバーの想いに触れることができました。ワコールにはこんなに熱い想いを持っている人がたくさんいることを改めて知り、まだまだ明るい未来が創れるぞって、ワクワクしたことも多々ありました。

堀:「今のワコールに足りていないものは何か」と議論した時に出てくる課題については、われわれも若手メンバーも認識が一緒なんです。例えば、上の世代はチャレンジしてほしいと思っている、若い世代もチャレンジしたいと言っている。だけど、チャレンジしにくいとも感じている。やってみよう、やりたいって言っているのにできない…それはなぜだろう、と。私自身、そういうことを深く考える良い機会になったと思います。

後編に続く