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巧妙化する詐欺広告にどう立ち向かうか──ワコールの現場から

「ワコールの広告だと思って表示された販売サイトで商品を購入したら、届いたのはワコールとは無関係の商品だった」

近年、SNS広告*を悪用した詐欺が急増し、被害は世界中で広がっています。当社でも同様の声が寄せられており、消費者保護の観点から深刻な課題と認識しています。
*…SNS広告:ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上で配信される広告のこと

本記事では、こうした詐欺広告(なりすまし広告・偽広告を含む)の実態と、当社がどのように対応しているのかを、法務・コンプライアンス部の知的財産担当へのインタビューを通じて詳しく紹介します。
実務の現場で直面している課題と、それに対する具体的な取り組みについても解説します。

―まず、詐欺広告の現状について教えてください。

ここ数年、SNSやスマホアプリの広告を悪用した詐欺が急増していて、世界中で被害が広がっています。
詐欺広告をクリックすると、詐欺サイトに誘導されて、ワコールとはまったく関係のない商品を販売するケースが非常に多いです。
実際、当社で行った5日間のモニタリング調査でも、ワコール製品を装った詐欺広告が多数確認されました。
しかも、静止画だけではなくショート動画まで使っていて、手口はどんどん巧妙になっています。

ワコールの事例では、ワコールとは無関係の製品・画像にワコールやワコールマークを付けてお客さまを騙す広告がメインです。
また広告内に「極端な値引き」「購入を急がせる」表現がある、誘導先の詐欺サイトのドメインがアルファベットの羅列であること等が特徴です。

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実際の詐欺広告の一例。次から次に新たな画像を使った詐欺広告が作られる。(写真左)
SNS上のワコール公式サイトを装った詐欺サイトから購入された商品。ワコールのロゴや社名は、商品・パッケージともに表示されていない。(写真右)

―そういったSNS詐欺広告に対する当社の取り組みを教えてください。

まずはお客さまへの注意喚起です。
公式ホームページはもちろんのこと、ワコールと直接繋がっていただいているお客さま向けに公式インスタグラムやXで情報を発信するほか、繋がっていないお客さまに向けてテレビや新聞などのメディアへの積極的な露出や、京都府警察、消費者庁や特許庁からも注意喚起いただくなど、広く注意を呼びかけています。

ワコール公式HP
日本経済新聞(SNS介し模倣品販売、日本に迫る コロナ下で被害急増)
▶日テレNEWS
 【販売会社に接触】日本ブランド“ニセモノ下着”広告 幅広い年代で被害相次ぐ『気になる!』
 【偽広告】「ミズノ」「ワコール」 被害相談相次ぐ…SNS中心に広がる
▶消費者庁
 人気ブランドの女性用衣料品等を販売すると称する偽サイトに関する注意喚起
▶京都府警サイバー対策本部
 偽サイト誘導広告注意喚起①
 偽サイト誘導広告注意喚起②
▶特許庁
 特許庁コピー商品撲滅キャンペーンイメージキャラクター「カワンゾちゃん」

次に、広告の監視と削除です。
SNS詐欺広告の多くは、Meta社のAudience Network、Google社のGoogle Ads、ByteDance社のPangleといった3大広告ネットワークが悪用され、FacebookやInstagram、YouTube、Google Discover、TikTokを通じて発生しています。
当社では、SNSプラットフォーマーが提供する広告検索ツールを活用して、広告の監視と削除を地道に続けています。
ただ、中には、こうした専用ツールの提供がないSNSプラットフォーマーもあるため、皆さまから寄せられる情報も頼りにしながら、詐欺広告を削除しているのが現状です。

SNS広告はユーザーの年齢・性別・興味関心などのデータに基づいてターゲティング配信される手法が用いられているため、広告主が設定するターゲティング条件に当てはまらなければ、いくら待ち構えていても私たちの手元では詐欺広告が出てきません。
その為、寄せられた情報をきっかけにしても見つけられないことも少なくありません。
これが、対策を難しくしている原因の1つです。

また、先述の広告検索ツールを利用することで詐欺広告を比較的見つけ出しやすい一部のSNSもありますが、それでもSNSの拡散力は強く、見つけ出して削除申告してから削除されるまでにタイムラグがあるため、一定時間、詐欺広告が目に触れる状態となり、被害に遭ってしまう方がどうしても生じてしまいます。

積極的な注意喚起に加え、京都府警察サイバー対策本部と連携し、広告主の追及を進めています。
京都府警察にご協力いただいている関係上、詳細はお伝えできませんが、オフライン・オンライン両面で調査を進めています。
SNSは匿名性が高く、広告主の特定が非常に難しいのですが、お客さま保護を第一に、諦めることなく追及しています。

あとは、知的財産業界団体であるIIPPF(国際知的財産フォーラム)での活動も積極的に取り組んでいます。

IIPPFでは20254月に「SNS詐欺広告ワーキンググループ」が設置され、被害を受けている企業を中心に業界全体で連携し、個社だけでは解決が難しい課題に対してより効果的な対策に取り組んでいます。
ワコールはこの取り組みに参画し、同じ被害を受けている他社と協働して詐欺広告対策を進めています。

―今後、どのような対応をしていくのか教えてください。

詐欺広告の手口は年々巧妙化していて、プラットフォーマー各社も対応に苦慮しているのが現状です。
広告審査の段階で多くはブロックされていますが、それでもユーザーの目に触れる詐欺広告は少なくありません。
実際、非常に多くの詐欺広告が配信されています。

こうした広告で被害を受けている方も少なくないため、今後もプラットフォーム各社への働きかけを継続していきます。
さらに、日本政府や発信元が存在するとみられる海外の政府に対しても、業界団体として対応を要請していく予定です。

インタビューを通じて:ワコールの詐欺広告対策のこれから

お客さまを詐欺広告の被害から守るため、当社では日々の情報発信や社内外での取り組みを通じて、さまざまな対策を講じています。
しかし、詐欺の手口は巧妙化・高度化しており、いち企業だけで完全に防ぐことは困難なのも現実です。
ワコールでは、今後も業界や関係機関と連携し、真摯に対策を進めてまいります。