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【前編】培ってきた強み、ローカルの力、
そして貫くべき理念を持って、「世界のワコール」に向けてグローバル成長を実現する

「VISION 2030」では、海外事業がグループ成長を牽引する重要な役割と位置づけられています。
「世界のワコールグループ」に向けてグローバル成長を成し遂げるため、 何を重視し、何が必要とされるのか。
前編では、ワコールの海外事業の特徴や歴史、グローバル成長を目指すうえでの強みを海外事業に携わる3名が語りました。

(統合レポート2022より抜粋)

  • 廣岡 勝也Katsuya Hirooka

    (株)ワコールホールディングス
    執行役員
    経営企画部長
    1991年入社。2003年より12年間海外勤務。香港、米国、英国法人の取締役として勤務し、2015年よりグローバル本部事業管理部長。2021年4月より現職。
    ワコールグループ全体の予算統制・財務・事業企画を担当。
  • 渡邉 卓Takashi Watanabe

    (株)ワコールホールディングス
    グローバル本部
    事業推進部長
    1994年入社。「Wing」の戦略企画、商品営業などを 経て、2013年より5年間、(株)ワコールマレーシア社長として勤務。2018年より小売事業本部直営店商品営業部長、2022年4月より現職。世界各国での市場拡大を推進。
  • 米川 健彦Takehiko Yonekawa

    ワコールシンガポール(株)社長
    1991年入社。(株)ウンナナクール社長、プレステージ営業部長を経て、2019年から(株)ワコールインターナショナルホンコン社長として2度目の香港勤務。2021年4月からは(株)ホンコンワコール社長とグローバル本部事業推進部長を兼任し、2022年4月より現職。アジアの販売国ヘッドクォーターの責任者も務める。

「ワコールに何ができるのか」を考えて1970年代から世界進出

まずは、ワコールの海外事業の特徴や歴史について教えてください。

廣岡:ワコールの創業者である塚本幸一は、創立間もない1956年に初めての海外視察を行いました。塚本は帰国後、かねてからの夢である「世界のワコール」の実現に向けて、「十年一節五十年計画」という長期戦略を掲げます。内容は、1950年代に国内市場を開拓し、1960年代に国内市場を確立。1970年代には海外市場を開拓し、1980年代に海外市場を確立。そして1990年代に「世界のワコール」を実現するというものでした。実際にこれに沿う形で、1970年にタイ、韓国、台湾に合弁会社を設立し、海外事業をスタートしています。1980年代には米国や中国市場へ進出し、さらに1990年代は世界企業の実現を目指して、欧州への進出を果たします。同時に、アジア圏での製造拠点の拡充も進めました。
この計画は、事業を通じて、女性がいきいきと活躍できる、平和な世界をつくりたいという塚本幸一の想いが込められたものです。ワコールの海外進出の基本方針は、会社の理念にもある相互信頼を礎に、それぞれの国や地域と共存共栄を図ることであり、現地主導による経営の確立を目指すことにあります。「ワコールはその国のために何ができるのか」。このことが新たに進出する際に常に意識している点です。利益だけではなく、企業活動を通じて文化を創造していくこと。その地域の発展に貢献し、地域の人々とともに成長を目指す企業であること。それを信念として海外展開を進めてきました。

現在の世界での事業規模はどのくらいでしょうか。また、海外事業におけるワコールグループの強みについてはどのように感じますか。

渡邉:現在、世界50以上の国と地域で製品を販売しており、タイや韓国、台湾などの非連結の合弁会社を含む当社グループの海外売上高は、1,000億円を超える規模となっています。また、連結ベースの海外売上高は約600億円(2022年3月期)となっており、内訳は欧米で約400億円、アジアで約200億円となっています。
米川:私たちの強みは、グループとして価値観の共有ができていることだと思います。廣岡から話があったように、「展開している国や地域と共存共栄を図る」「現地主導による経営の確立を目指す」という海外進出の基本方針は今でも共有されています。また、国や地域ごとにマーケティングを行い、商品開発から販売を独自で行っていることも私たちの特徴であり、強みです。
渡邉:国や地域によって体型は異なりますし、デザインやカラー、フィッティングの好みも違います。現地のニーズに合わせながらそのエリアごとのビジネスモデルを作り上げてきたことは、とても強みになっています。
米川:同じ商品を世界中で展開するSPA型のビジネスモデルとは全く逆のやり方です。それから、一部例外もありますが、日本から派遣される駐在員は1~2人と少数で、現地の従業員と協力して事業を運営しているのも大きな特徴です。
廣岡:そうですね。ワコールの価値観や想いを共有してそれを実現することに誇りを持っているローカル従業員がたくさんいること。それは大きな強みだと、私も現地にいる時から感じていました。今までの駐在員がワコールの理念を強く持って、現地の方々を信頼してビジネスを育ててきた結果だと思います。

強みを活かし、連携を密にしてグローバル成長を目指す

「VISION 2030」とともに、「世界のワコールグループ」の定義を策定されました。

廣岡:もともと「世界のワコール」として定義していた内容については、達成できている項目も多くなっていましたので、次に目指すステージを「VISION 2030」の策定とともに明らかにしました。新たに定義した内容には、事業成長だけではなく、地域社会や顧客をはじめとするステークホルダーとの関係構築も意識した内容になっています。私が初めて海外に駐在した2003年当時は、海外事業の売上比率は10%程度でしたが、各子会社が着実に成長した結果、海外事業の売上高は売上全体の30%を超えるまでになりました。今後は子会社それぞれが横の連携を強めることに取り組み、総合力を発揮しながら世界でワコールグループのプレゼンスを高めていくステージに入ります。これが新しい定義の意図するところです。
「VISION 2030」における「世界のワコールグループ」の定義
  • グループの商品・サービスや社会的課題に係る取り組みが、すべてのステークホルダーから高い信頼を得ている
  • グループの人材、資産、ノウハウ、ネットワークを最大限活用し、世界規模で競争優位性のある事業展開を行っている
  • 革新的かつ高品質な商品・サービスで、新たな顧客体験を創造し続け、世界中のお客さまの生活を豊かに美しくし続けている
  • 全世界の従業員がグループの目標、使命を理解し、その実現に向け、常識や過去にとらわれずに挑戦している
 

海外事業において、ワコールグループだからこそ提供できる顧客価値についてはどのようにお考えですか。

渡邉:ワコールのものづくりの強みは、人間科学研究開発センターをはじめとした基礎研究をベースに、機能性とファッション性を両立させていることです。そして、自社工場での生産による品質へのこだわり、教育を受けた販売員による接客、これらすべてワコール独自の特徴です。また、それぞれの国や地域で異なるニーズに柔軟に対応できることもワコールの特徴と言えるでしょう。加えて、デジタル化が進み、「3D smart & try」や米国でリリースした「Wacoal-mybraFit」のようなワコールの強みを活かした新しいお客さまとのコミュニケーションの手段も進化してきています。お客さまのニーズの変化に対応して、常にアップデートした商品やサービスを高い次元で提供していかないとグローバルでは生き残っていくことはできません。
米川:成長に向けたキーワードは「パーソナライズ」だと思います。ワコールは国や地域に根差したビジネスを展開し、マーケティングと商品開発を行っているため、現地のお客さまの好みや体型にフィットする商品の開発・提供が強みです。ワコールの理念を理解した販売員による店頭でのお客さまとのコミュニケーションに加え、「3D smart & try」や「Wacoal-mybraFit」のようなデジタルサービスを組み合わせることができれば、個々のお客さまのご要望に沿ったパーソナライズされた顧客体験価値を提供することが可能になると思います。他社にはない価値を追求することで、顧客価値の最大化を実現したいと思います。

グローバル成長の実現のため、培ったノウハウやネットワークなどをどのように活かしていかれますか。また、グローバル本部が果たすべき役割についてどのように考えていますか。

渡邉:グローバル本部では、世界の最新の情報や各国の成功事例をスピーディーに水平展開し、共通化することで、各子会社単独では実施できない取り組みをコーディネートしています。また、アジアでは各国の横の連携を支える役割も担っています。
また、今後に向けてグローバル本部は、次の2つの取り組みを重視しています。1つ目はグローバルベースでのブランディング強化です。まだまだブランド認知度が低いのが現状ですので、世界中のより多くの人にワコールを認知いただくための投資についても積極的に実施していきたいと思っています。2つ目は、それぞれの国や地域のお客さまとのコミュニケーションのサポートです。日本では現在、お客さまとの深く、広く、長い関係づくりに向けて、CX戦略を推進していますが、同様の戦略が海外で展開できているかと考えると、まだ弱いのが現状です。デジタルを積極的に活用しつつ、お客さまとつながる戦略をそれぞれの国や地域で展開できるよう、必要なサポートを行っていきたいと考えています。

今年からシンガポールをハブとしたアジア販売国HQ(ヘッドクォーター)体制をとっていますが、アジア地域の成長に向けて販売体制の強化にはどんな課題があるとお考えですか。

米川:アジア販売国HQの対象は香港、シンガポール、フィリピン、ベトナム、マレーシアの5つの国と地域です。それぞれの子会社の事業規模が小さいため、これまで必要な投資ができておらず、また個々に投資を行うとかえって事業効率が悪いという課題がありました。そこで、今年の4月にシンガポールにHQを設置し、事業効率アップのための共通化に取り組んでいます。例えば香港とシンガポールでは、現地で受け入れられる価格帯やサイズ構成など好まれる商品の特徴が近いため、商品を共通化するとともにマーケティングも共同で行っています。また、今後成長が見込まれるECの強化に向けては、共通のプラットフォームを開発するなど、国や地域ごとのポテンシャルを考えたうえで、各国の成長に向けた戦略を連携して取り組んでいます。