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特集

特集2014

社外取締役インタビュー

ワコールは「常に世界の流れを正確に捉えるために、
神経を研ぎ澄ませている会社。常に世界の先端を歩もうと
努力している会社」といえると私は考えています。

矢崎総業株式会社顧問
富士急行株式会社 社外取締役
キッコーマン株式会社 社外取締役

尾崎 護

ワコールグループでは、すべてのステークホルダーの皆さまからご支持いただくためにも、コーポレート・ガバナンスを正しく機能させていきたいと考えております。中でも専門的な知識に基づいた客観的、中立的な助言によって取締役会の意志決定に関与する社外取締役は、重要な役割を担っています。本レポートでは、2005年から当社の社外取締役として重責を負う、尾崎護氏にご意見を伺いました。

ワコールホールディングスの社外取締役としての役割について考え方をお聞かせください。

コーポレート・ガバナンスにはさまざまな側面があります。その中で、社外取締役を置くということ自体も一つの要素だといえます。社外取締役は会社を統治していく仕掛けの一つであり、重要な経営のチェック機能として私自身が仕掛けそのものであると認識しています。役割を果たす上で重要なことは、会社の視点のみではなく、外部、特に株主の立場で見ることを心掛けなければなりません。株主など外部の視点を大事にしながら、ワコールの発展に貢献していくことが社外取締役の存在価値だと意識して職務にあたっています。
また、経営上の提言にあたっても、外部からどう見えるかということを大切にしています。ただし外部からとはいっても、ワコールの具体的な仕事内容に対する理解が低いままでは意味がないとも思います。ですから、関係の方々には多くの質問を投げかけ、必要に応じて別途レクチャーを受けるなどして、可能な限り理解を深めた上で、冷静かつ中立的な堤言をするように心掛けています。
コーポレート・ガバナンス全体を通じた観点では、ワコールの仕組み・体制自体はよく整っていると思います。あとはその仕組み・体制が何を目的として構築されているかという精神を個々の社員へ浸透させて、具体的な運用の成果をあげていくべきだと考えています。

創業から60年以上が経過しているワコールですが、社員に対する経営理念や社是の浸透についてどのようにお考えでしょうか?

やや注意を要すると感じるのは、ワコールの社是にある「相互信頼」という言葉です。社員相互の信頼関係は会社のまとまりの上で重要なことですが、ワコールにとって最も大切なのは、お客さまであり、それが世の女性に美しくあって欲しいという目標につながってくるわけです。そういったお客さまに、ワコールの商品を使っていただき、満足していただき、その結果お客さまから得られた信頼こそが最も大切なのではないでしょうか。それはお客さまからの「一方的な」信頼であってもありがたいことであるはずです。今後、ワコールがグローバル展開を拡大していくに当たっても、同じように現地のお客さまからの信頼を勝ち得ることが第一ですが、そのベースを創るのは従業員やサプライヤー、現地ビジネスパートナーとの信頼関係でしょう。「相互信頼」という言葉には、幅広い、視野の広いビジョンを持たせながら、伝え続けるべきだと考えています。
「相互信頼」は終戦後、前社長がワコールの基礎を築きながら、自らの体験から生み出した言葉のようです。半世紀もの時間が経つ中、当時の想いを伝えることは非常に重要ですが、現在の価値観や感覚の中で育てられた人たちが素朴に共感することは難しい面もあるように思います。「相互信頼」という言葉については、「実はこういう風にやってきたんだよ。」ということを、具体的な事実に基づいて従業員に理解させることが大切だと思います。

ワコールは「世界のワコール」になることを掲げています。今後のグローバル展開にあたってど のようなことが必要だとお考えでしょうか?

国際的な動向や流行に目を向け、感覚を研ぎ澄ますことは非常に大切です。そこは経営陣も、よく心得ていると思います。日本の人口が減少傾向にある中国内消費が減っていくのは当然ですし、ワコールの商品を買っていただけるお客さまが減少していくことも防ぎようがないことだと思います。高齢化し、人口が減っていく環境下でどういった商品を開発し、販売するのかということは重要な問題です。さらにそうした状況をカバーするには、やはり海外事業での伸張が必要不可欠であり、今後の収益源は海外事業が占めるはずです。
最近ではM&Aでイヴィデンがグループに入りました。こうした良質のM&Aは、海外事業の成長においても、正しい選択枝の一つだと思います。また、米国地域は好調を維持していますし、中国においては長年赤字が続いていましたが、当期には黒字転換を果たすことができました。素晴らしいことです。これまで我慢をし続け、地道に積み上げてきた取り組みの成果がようやく現れてきました。今後、継続的に収益を上げ続けることが期待されます。中国経済は成長が鈍化しつつあり、急激な伸びを期待できないかもしれませんが、依然として世界経済でも主役のひとりであり続けるでしょう。このようにグローバル展開にあたっては、長期的な視点で考えながら、堅実に仕事に取り組んでいくことが肝要です。

それぞれの地域における人材活用についてはいかがでしょうか?

「世界のワコール」という観点でいえば、最も大切なことは親しみやすい商品であり、世界の人々から愛される商品を提供し続けることだと思います。身に着けるものは各地域によって違いがあり、素早く地域の好みや嗜好と親和性のあるデザインを考える必要があります。そういった感覚こそワコールがグローバルに発展していく上で大切です。そのためには、一つの結論として、現地の人材活用が重要です。管理職にも現地の人材を登用して、その気候・風土・社会にあった経営にしていくというスタンスが必要です。現地の人々でなければ理解できない感覚があるはずであり、そういった点では地域との「相互信頼」の精神を基調に十分な検討を重ねて取り組んだ方が良いと考えています。北米や中国などでも長い間苦しんできましたが、黒字化を果たしたことは地道な努力が実った成果であり、非常に喜ばしいことだと感じています。
外部の視点からすれば、加速度的な事業展開が望まれるかもしれませんが、現地の信頼を得て、ブランドが根付くのには時間がかかります。これまでのところ、従業員や地域社会、地域の顧客との信頼関係を土台に、着実な成長ができているのではないでしょうか。

グローバルな展開が加速する中、国際的な観点で注意すべきことはどんなことでしょうか?

ワコールに限らず、グローバル展開する企業であれば直面することですが、現地国での法規やコンプライアンスへの対応が必要となってきます。当然のことながら日本との違いに対処するのみならず、それぞれの国ごとの違いや、国際的な価値観との衝突にも対処していく必要があります。ワコールにも独自の倫理規範や行動指針があり、国際的にも現地の事情に即して適切な対応をしています。ただし、こうした現地ごとの異なる事情に対応していくことは、非常に難しい問題です。株主の代表としての立場で言えば、国際的なコンプライアンスの対処が最優先になることで事業活動に支障が出て、収益が毀損されることは憂慮すべき問題になります。一方で国際行動規範を最大限尊重していくことも非常に重要な課題です。これらが対立することもままありますが、大切なのは、双方の立場から功罪をよく検討することではないでしょうか。現地法で許されていることであっても、国際ルールを守ることは大前提だと決めつけて思考停止に陥ることは避けなければなりません。法や規範の目指すところや、中長期的に期待される事業収益、当該国や地域社会に与える影響などを吟味し、納得できるまで議論を尽くすべきです。また、議論にあたっては、現地の習慣や社会情勢を熟知しているローカルスタッフの意見をよく聴かなければなりません。実は、今年度の取締役会で私が最も強く申し上げたのはこの点でした。

最後に、株主・投資家に向けて、メッセージをお願いします。

ワコールが長きにわたってブランド力を維持し続けているのは経営面のみならず、ものづくりの感覚が非常に鋭いからだと思っています。企業としての鋭敏な感覚があるからこそ、感覚の良い人材が集まり、愛される商品が生まれるのだと思います。このように、ワコールは「常に世界の流れを正確に捉えるために、神経を研ぎ澄ましている会社。常に世界の先端を歩もうと努力している会社」と言えると私は考えています。株主・投資家の皆さまも、長期的な視点で是非ワコールにご期待ください。