

経営の基本方針
-相互信頼はすべての原点-
「相互信頼」は、ワコールの創業期に端を発する、今日の経営の原点である。
創業者・塚本幸一は私たちに「相互信頼」の神髄を伝えてくれた。創業者は述べている。
ワコールは、単なる営利主義で創業されたのではない。「生かされ与えられた人生を世の為人の為に何かをつくさんとして」始められたのであり、「事業を通じて人間社会の生き方を研究」した結果、「相互信頼の基調が人間社会にとって一番大切であり、人間集団の生活にとって最高のものである」ことを、私たちは「歴史と伝統の中に作り上げて来た」…と。
かりに、「相互信頼」の言葉がなかったとしても、ワコールはそれなりに事業を継続し発展してこられただろう。しかし、時を経て振り返ったとき、「相互信頼」なしで歩んできた道を社会に向けて堂々と誇ることができるか、「相互信頼」なしで得た事業成果を心の底から喜び合うことができるか、そういった疑問は残るだろう。
たしかに、「相互信頼」という言葉がなくても、ワコールは企業として動き続けることができる。
しかし、「相互信頼」がなかったら、ワコールの「精神」や「志」が失われてしまうと、私は思う。
人と人は互いに信頼しあえてこそ幸福になれる。このことは企業の中でも、企業同士でも、企業と社会の間でも同じであり、五十年前でも、五十年後でも変わることのない、永久の真理である。
「相互信頼」を基調とした社風を確立し、そして人間尊重の会社を築くこと。
創業者の目指したこの理想の精神を引き継ぐことも、次代を担う私たちの重要な任務なのではないだろうか。
株式会社ワコールホールディングス
代表取締役社長
塚本 能交
(2001年刊『お客様とともに』より抜粋)
■経営の基本方針
1. 愛される商品を作ります
お客さまが本当に欲しがっておられるものを見つけ出し、お客さまのニーズを充足すること。お客さまにその値打ちを認めていただき、可愛がってもらえる商品を作り出すこと。しかも、それを適時適確にお届けすることが、愛される商品作りであります。
商品企画、生産、物流、販売、宣伝、これらの活動を支える一切のワコールの活動は、広義の愛される商品作りに含まれます。
ワコール製品は、付加価値の高いブランド品であり、製品作りに携わる人は、ワコールブランドへのこだわりと誇りを決して忘れてはなりません。
ワコールの強みは、お客さまから認められた「高い品質」であり、品質でお客さまの信頼を裏切るようなことは絶対に許されません。製品の安全性はもちろんのこと、品質保証については全てに優先する課題として、妥協のない態度で臨むことが必要です。優雅良質で適正な価格の本当にお客さまに愛される商品作りそのものがワコールであって、これなくして、ワコールは存在しないのです。
2. 時代の要求する新製品を開発します
お客さまの意識は時代と共に進化します。ワコールは、ファッション性の高い商品群を取り
扱っているのであり、お客さまの要望も次々に移り変わっていきます。時代の要求するという意味は、その時その時の市場(マーケット)が要求するという意味であり、遅からず早からず、絶えることなく、その時と所のニーズに見合った新製品を開発創造していかなければなりません。時代の要求する新製品の開発こそ、ワコールが発展する原動力なのです。
更に、新製品開発の精神をあらゆるワコールの活動にも適用し、サービスやシステムもその時代の要求に応えて、最高のレベルを目指すように努力しなければなりません。変化への対応力は、企業の生命線であり、思い切った現状の打破、建設的な革新が常に必要であります。建設的な革新の精神の喪失は、企業の衰退に直結していることを肝に銘じなければなりません。
3. 大いなる将来を考え正々堂々と営業します
大志のあるところに大きな活力が生じ、あらゆる艱難辛苦に耐えて目的を達成しようとする意欲と行動が生まれます。
「世界のワコールの実現」が、ワコールの大志であり、それがワコールの夢見る「大いなる将来」であります。ワコールを構成する一人ひとりは、大きな理想を実現しようという大志に燃え、勇気凛々としながらも、おごることなく又卑屈になることなく、商売の正道を踏んで責任ある取り引きを実行しなければなりません。
また、規則・法律や国際的なルールを遵守するとともに、ステークホルダー(利害関係者)との良好な関係を保ち、企業としての社会的責任を果たしていかなければなりません。合法性、公正性、公開性は、企業にとってますます重要であり、ワコールはオープンマインドで常に真実の報告がなされている倫理観の高い企業を目指します。
4. より良きワコールはより良き社員によって造られます
ワコールの発展は、社員一人ひとりの資質の向上とその協力によって実現できるのであり、人材はワコールの最も重要な財産であります。
より良き社員とは、社会人としての礼儀作法やマナーを身につけ、その上で、ワコールの基本精神を体得して、ワコールの理想の実現に向かって、具体的に努力し実践する人々であります。
また、ワコールは、自分の価値の向上に努め、いかなる事業変動にも対応できる実力をそなえた自律した人材を育てるために積極的に支援をしていきます。
健康的で自由闊達な社員が、助け合い、励ましあい、鍛えあって、より強く連帯していってこそ、ワコールの理想とする組織体、即ち、相互信頼の心情で結ばれた真の人間集団としてのワコールを造り出すことができるのです。
5. 失敗を恐れず成功を自惚れません
企業活動は、本来冒険的なものであり、危険を冒し困難を克服して目的を達成するものであります。失敗を恐れぬ冒険心と成功しても常に謙虚であり決して自惚れない平常心は、ワコールのあらゆる事業活動を遂行するにあたって、絶対欠かせない精神態度です。
ワコールは、本業を重視しながら、しかも本業を伸ばすためにも、新規事業の芽を育てていかなければなりません。それには未知なる事業に果敢にチャレンジしていく人材が必要です。
財務の健全性を維持しながら、企業体質のベンチャー性を持続することが、ワコールの旺盛なバイタリティの源泉であり、また不断の前進の支えであります。












